ネイルサロンの開業で使える補助金等

ネイルサロン

Text by 中小企業診断士 原 賢治

ネイルサロンを開業するには、施術テーブルや椅子などの備品、物件の取得費や家賃、床や壁紙などの内装工事代、看板やホームページの作成などが様々な費用が必要になってきます。

これらを全て自己資金で賄うのは大変です。

そんな時に活用できる補助金等があります。知っている方はこれらをうまく活用し、少ない自己負担で開業しているので、この機会のぜひご参考ください。

〇補助金と助成金

最初に言葉の定義をしておきたいと思います。よく「補助金」や「助成金」といった言葉を見かけますが、特に違いはありません。

経済産業省系は事業計画を申請しその中から採択されるパターンで「◯◯補助金」という名称のものが多く、厚生労働省系は要件を満たしていていれば必ずもらえる「○◯助成金」という名称ものが多いのでが、自治体では事業計画を申請し採択されるものでも「○◯助成金」といったりしますのであまり気にする必要はありません。以下の説明では「補助金等」とさせていただきます。

◯国が行っている補助金等

補助金等には、国が行っているもの、都道府県が行っているもの、市区町村が行っているものがあります。

国が行っている補助金等で創業者も対象となっていて申請しやすいものとして「小規模事業者持続化補助金」があります。毎年必ず公募されるというわけではないのですが、平成24年度からは毎年公募されており、令和3年度も出る予定ですので、当面続く可能性はあります。

この補助金は小規模事業者(サービス業は5人以下)の販路開拓に必要な経費に対して、上限50万円、補助率2/3を補助する制度となっています。

販路開拓となっていますが使い道は幅広で、チラシの制作費、ホームページの制作費、インターネット広告費から、販路開拓に必要な器具・備品、内装費なども対象となります。

例えば、プライベートネイルサロンを立ち上げる際に必要となる、ネイル用の机、椅子、LED硬化ライト、卓上ライト、ワゴン、フットセット、ロッカー、シャンデリアなどの備品も対象となります。また床や壁紙の張替えなどの内装工事費用も対象となります。

また市区町村が行っている「特定創業支援等事業」による支援を受け、市区町村が証明書を交付した創業者は補助金が100万円になります。

申請にあたっては、販路開拓に関する「事業計画」を作成し、日本商工会議所に提出する必要があります。この事業計画の内容によって採択・不採択が決まります。

ネイルサロン開業

◯都道府県が行っている補助金等

都道府県が独自に行っている場合があります。例えば東京都では毎年春と秋の年2回

「創業助成金」の公募があります。こちらも事業計画書を作成し採択される必要がありますが、補助上限額は300万円、補助率は2/3となっています。

創業補助金の場合は様々な経費が対象となる場合が多く、器具・備品費、人件費、家賃、広告費、外注費などが対象となります。

◯市区町村が行っている補助金等

市区町村でも同様に創業者向けの助成金を設けている場合があります。国や都道府県ほどの金額は出ないかもしれませんが、これから事業を開始する予定の市区町村の制度を調べてみましょう。

◯商店街で開業する場合の補助金等

都道府県や市区町村では、商店街の活性化と創業者の支援を目的に商店街で開業する方向けの助成金を設けている場合があります。

対象経費としては、店舗の新装・改装工事、設備・備品購入、宣伝・広告費、店舗賃借料などが対象になります。店舗の賃借料は1~2年間補助される場合が多く、トータルで見ると補助額が大きくなる可能性がありますのでお勧めです。

〇採択されやすい事業計画書の作り方

今までご紹介してきたものは基本的には事業計画書を作成し、採択されると支給される補助金等となっています。

ここで大切なことは補助金等は公募するにあたって必ずその目的があるということです。

例えば商店街で開業する場合の補助金等は、「商店街の活性化」という目的がありますので、事業計画も「商店街の活性化」という目的に沿った内容にする必要があります。

そして、補助金等には目的に沿った審査項目が設けられております。公募要領の中で、「審査項目」や「審査の視点」といったところがありますので、その内容をしっかり押さえた事業計画書を作成することが、採択される上で重要となります。

◯最初の募集は採択率が高い

年に複数回募集がかかる補助金等の場合は、最初に出る募集の採択率が高くなる傾向があります。

例えば2020年実施の小規模事業者持続化補助金を例に取って見ますと、第1回締切分の採択率は90.9%、第2回締切分の採択率は65.1%となっています。

第1回目は募集期間も短くなる場合がありますので、なるべく情報のアンテナを張り、早めに準備にとりかかりましょう。

〇補助金等の支給は事業実施期間終了後

一般的に補助金等が支給されるのは、採択された事業の実施期間が終了し、かかった費用の報告書を提出した後で振り込まれます。

それまでは自分で立て替える必要があるため、資金に余裕がない場合は、採択後金融機関からの融資を検討しましょう。

◯事業開始に係る「再就職手当」

一定の要件を満たしていれば支給される補助金等もあります。

ここでは、雇用保険に加入していた方が会社を退職し、自営業を開始する際にもらえる「再就職手当」をご紹介させていただきます。

「再就職手当」とは、雇用保険受給資格者が基本手当の受給資格の決定を受けた後に早期に安定した職業に就いた場合に支給されるものですが、事業開始した場合にも一定の要件のもと支給されます。

事業を開始した場合も再就職手当が支給される要件として以下のものが挙げられます。

  1. 事業を開始した日(準備期間がある場合は、準備を開始した日)の前日までの認定を受けたうえで、支給残日数が、所定給付日数の3分の1以上であること。
  2. 開始した事業により、受給期間内に雇用保険の被保険者となる者を雇い入れ、雇用保険の適用事業主となること、または、1年を超えて事業を安定的に継続して行うことができると認められるものであること。
  3. 待期が経過した後に事業(準備期間がある場合は準備)を開始したものであること。ただし、給付制限を受けた場合は、待期満了後1か月間に事業(準備期間がある場合は準備)を開始したものでないこと。

ただし、「再就職手当」を含む「求職者給付」の支給を受けられない要件の一つに「自営を開始、または自営準備に専念する方(求職活動中に創業の準備・検討を行う方は支給可能な場合があります。)」とあります。

つまり、最初から創業を目指す方は対象ではなく、求職活動をしつつ創業も考えている方が対象となりますので注意が必要です。

「再就職手当」の支給額は以下の通りとなっています。

  • 支給残日数が3分の2以上:基本手当日額×支給残日数×70%
  • 支給残日数が3分の1以上:基本手当日額×支給残日数×60%

申請の窓口は管轄のハローワークになります。

◯特定創業等支援事業

 補助金等とは異なりますが、取得しておくと様々なメリットがある「特定創業等支援事業」をご案内させていただきます。

「特定創業等支援事業」は、これから創業を行おうとする方または創業後5年未満の方が、国から創業支援事業計画の認定を受けた市区町村が実施する創業セミナーや創業相談を終了し市区町村から証明書の発行を受けることで、さまざまなメリットを受けることが出来ます。

各市町村で異なりますが、主なメリットは以下の通りとなっております。

1.会社設立時の登録免許税の軽減

株式会社又は合同会社は登記にかかる登録免許税が資本金の 0.7%→ 0.35%に軽減

(最低税額は株式会社の場合 15 万円→ 7.5 万円、合同会社の場合 6 万円→ 3 万円に軽減)

2.日本政策金融公庫新創業融資制度・新規開業資金

新創業融資制度:創業資金総額の10分の1以上の自己資金要件を満たす方とみなされます。

新規開業資金:貸付利率の引き下げの適用を受け、融資を利用するこができます。

3.その他のメリット

その他のメリットとしましては、都道府県や市区町村が実施する創業補助金等の申請要件になっている場合があります。

また補助金等の増額のメリットがあります。前述の小規模事業者持続化補助金では、特定創業支援等事業の支援を受けた小規模事業者については、補助上限額が50万円から100万円に引き上げられます。

〇補助金等を調べるサイト

補助金や助成金は募集期間が短く知らないうちに終わっていたということも珍しくありません。

中小企業支援のポータルサイトの「JENT21」の「補助金・助成金・融資」のサイトでは、国や都道府県、市区町村から出ている補助金等を一括で検索することができますので、自分の地域で出ている補助金等を調べてみましょう。

https://j-net21.smrj.go.jp/snavi/support/

〇支援機関を活用する

各都道府県には中小企業を支援する機関として、中小企業支援センターが設置されています。「〇〇県産業振興センター」や「〇〇県産業振興公社」といった名称になっており、経営全般に関する相談や、補助金等に関する最新の情報提供を電話や面談で行っています。

また政令指定都市や人口が20万人以上の中核市でも同様の支援機関があり、より地域に密着した支援を実施しています。

さらに商工会議所・商工会といったところでは、会員でなくても無料で創業相談に乗ってくれますのでぜひ活用しましょう。

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