Text by 薬剤師ろぎー
ネイリストは、職業上毎日のように化学物質を取り扱います。
爪だけでなく手先も美しくあり続けるために、そして安心安全でやりがいのあるネイリストライフを楽しむために、 今回は日本皮膚科学会が出している、「接触皮膚炎診療ガイドライン2020」から、
ネイリストなら知っておきたい皮膚の病気について薬剤師としてなるべく簡単な言葉と理論でお伝えします。
より詳しく知りたい、という人は、記事の最後にある参考資料にリンクを貼っておくので、そこから実際のガイドラインを確認してみてください。
皮膚炎の種類
私たちは皮膚が荒れると、
「わっ、アレルギーがでちゃった」
という言葉を使うことが多いですが、
皮膚科学会の世界では何らかの外的な原因で皮膚が荒れることを「接触皮膚炎」といいます。
大きくわけると、「刺激性」と「アレルギー性」にわけられますが、 簡単にいうと、
皮膚の角質層やバリア機能が何らかの原因で壊されることによって起こってしまうのが刺激性で、
皮膚の奥に入り込んで炎症をひきおこすのがアレルギー性です。
特にアレルギー性は注意が必要で、繰り返し繰り返しアレルギーのもとになる薬剤に触れることによって、
手先だけでなく顔など全身に炎症が起きてしまったり、場合によっては喘息や呼吸困難などを引き起こしてしまうこともあります。
たかが「皮膚炎」と油断をせずに、原因となる物質から身を守るように手袋を使うなど日ごろからのケアをしていきましょう。
刺激性接触皮膚炎について
皮膚の表面の角質層は、正常な状態であれば刺激から私たちを守ってくれるバリアの役割をしてくれます。
しかし、アルカリ性の洗剤や皮膚の刺激によってバリア機能が壊れると、普通なら角質層を通らないような物質が通ってしまったり、壊れたバリア機能自体が炎症を引き起こすことがあります。
ネイリストは手先を使う仕事ですし、日ごろから多くの化学物質を使用します。
手洗いや除菌後には保湿剤を使うなどして角質層の保護を日ごろから行っていきましょう。
アレルギー性接触皮膚炎について
アレルギー性接触皮膚炎は、刺激性接触皮膚炎と違って、皮膚の表面から入ってくるくらい小さい物質(ハプテンと呼ばれる化学物質)によって引き起こされるといわれています。
なぜ引き起こされるかの細かい部分は今回は割愛しますが、ハプテンが直接引き起こす場合と、ハプテンが入ったことにより身体が過度に反応して皮膚炎を引き起こす場合があります。
なかなか仕事の上で原因となる化学物質を避けることは難しいかもしれませんが、手袋や長袖の着用、小さい粒子を通さないN95マスクの活用など、 原因物質を身体に入れない工夫をしていきましょう。
(ネイリストにおすすめのマスクについてはこちらの記事を参考にしてください)
接触皮膚炎症候群・接触蕁麻疹症候群
ある物質が原因でアレルギーが引き起こされてからも、継続してその物質に触れ続けると、今度は皮膚だけでなく全身に強いかゆみが出ることがあります。
ぜんそくや鼻炎などの症状や、腹痛や嘔吐といった症状があるという方は要注意です!
最終的にはアナフィラキシーショックという呼吸困難や血圧の低下などの症状を引き起こすこともあるので、もし全身に症状が出ている場合には、我慢しないですぐに病院やクリニックを受診するようにしてください。
まとめ
ネイリストの仕事は、爪先をきれいにして気分を明るくしてあげることのできる仕事です。
一方で常に粉塵や化学物質からの危険にさらされているともいえます。
爪の健康と身体の健康は表裏一体です!
これからのネイリストとしての活動のためにも、
大切な人や家族や友人のためにも、自分自身の健康にも気を付けていきましょう。
薬剤師ろぎー
(参考)日本皮膚科学会ガイドライン
「接触皮膚炎診療ガイドライン 2020」
https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/130_523contact_dermatitis2020.pdf